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はじめに:Type-Cは“ただのコネクタの形”ではない
スマホやPCのUSB-Cケーブル、ただ挿してるだけだと思っていませんか?
USB Type-Cが主流になったことで、裏表なく挿せて通信も充電もできる便利な時代になりました。
でもType-Cは“ただの形”を指すだけではなく、電源・通信・映像・音声など”複数機能”を持つインターフェースです。電源供給という視点では、最大240Wまで対応し、ノートPCやモニターも駆動可能になっています。
USBポートに挿すその瞬間、内部では複雑な“電流の会話”が交わされています。裏表なく挿せる便利さの裏で技術面での工夫が効果を発揮しているのです。
『Type-Cだから急速充電できる』と思ったら大間違い
Type-C形状のコネクタがついていても、USB PDに対応しているとは限りません。
充電専用の古いUSB規格 (USB BC1.2) にしか対応していない機器や、「ただのType-Cの形をしたケーブル」など、PD未対応のアクセサリも多く存在します。
「Type-C=USB PD」と思い込むと、「思ったより電流が流れない」「機器が起動しない」といったトラブルに繋がることがあります。(同様に、Type-C=USB 3.0以上とは限らず、USB2.0の通信しかできない場合もあります。)
製品仕様やICのプロトコル対応状況は、事前に必ず確認する必要があります。
PDのメリット:電力交渉で最適化された給電へ
USB PDは、通信によって給電条件を交渉するインテリジェントな仕組みです。
主なメリット
- 最大240Wまでの柔軟な電力供給:PCやモニターも充電できる
- 電圧レベルの選択 (5V/9V/15V/20Vなど):一つの充電器で何でもまかなえる
- 給電・受電の役割が切り替え可能 (Role Swap):ケーブルの抜き差しで充電する・されるが変わる
- プロトコル通信による信頼性の確保:明確な意思交換を経て給電が開始されることで安全性が向上する
電源交渉の仕組み:CCラインとPDパケット通信
USB PDでは、Type-Cで追加されたCCライン (通信専用の特別な線) を使って、細かな情報 (パケット) をやり取りすることで会話が進められます。機器同士は以下のようなパケットをやり取りし、条件の合意後に給電が開始されます。
- Source Capabilities (送電側の電源能力)
- Request (受信側が必要な電圧・電流を送電側に通知)
- Accept/Reject
この交渉には、双方がPDプロトコルに対応している必要があります。
交渉が終わるまで給電が始まらないので、意図せぬ高電圧による破損などを未然に防ぐことができます。

E-Markerの存在と“ケーブル性能”の限界
Type-Cケーブルには、IDチップである E-Marker が組み込まれていることがあります。
このIDチップには「このケーブルは最大〇WまでOKです」「高速通信できます」というような情報を持っていて、ポート側にこの情報が伝えられます。
ポイント
- 最大3A (60W) までならE-Marker不要
- 65W以上の給電にはE-Markerケーブルが必須
PD対応の電源・機器でも、ケーブルがE-Marker非対応だと期待通りの出力が得られない可能性があります。
映像出力もできるオルタネートモード
Type-Cにはオルタネートモード (Alt Mode) という拡張機能があり、映像や音声などUSB以外の信号を流すことができます。例えば、
- DisplayPort Alt Mode
- HDMI Alt Mode (一部の対応機器)
USB-Cケーブル1本で給電・映像・通信すべてを処理できる環境が整ってきており、今後対応機器が増えることでより身近になっていくでしょう。ハブやドック製品では、Alt Modeによって給電・映像・通信の3役をまとめて処理できる設計が進んでいます。

まとめ:Type-CとPDの“会話力”を活かす設計
USB Type-Cは、見た目以上に高度な交渉能力を秘めたインターフェースです。
PDによる電源交渉、E-Markerによるケーブル性能通知、Alt Modeによる映像伝送――
USBは単なる接続ツールではなく、賢く対話するパートナーです。これらの“電気的な会話”を理解し設計に活かすことで、安全かつ効率的で多機能なエレクトロニクス製品が生まれます。
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